NTT西日本大阪病院 阿倉 薫
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撮影の注意点
市販のデジカメは顕微鏡写真専用に作られていませんので、撮影には少し工夫が必要です。
(1)顕微鏡のレンズとデジカメのレンズの光軸を合わせる。
一番難しいのがこの光軸合わせです。 光軸が一致するのは数ミリしかありませんので細心の注意が必要で
す。初めのうちは光軸がずれたりカメラの角度が違ったりしてうまく写りませんが慣れるに従って徐々に、光軸が合うようになってきます。(写真3,4)
同僚にちょっと手助けをしてもらったり、ポリ容器の蓋を利用した簡単なアタッチメント(写真5)を用いることでさらに簡単に光軸が合うようになります。三
眼顕微鏡からはカメラをのせるステージを自作しています。(写真6) さらにCマウ
ント様には、カメラのレンズにねじ込み式のジョイント(写真7)を町工場で作ってもらって使用しています。これらを用いると、専用の撮影装置にひけをとらない簡便さと確実性で顕微鏡写真の撮影が可能です。
(2)光学ズームを最望遠側にする。
表1の顕微鏡写真の撮影が可能なデジカメも、ズームの広角側では視野の中心部に円形にしか写りません。
ズームを望遠側にするに従って視野のケラレがなくなり、顕微鏡写真の撮影が可能になります。(写真8)
(3)フォーカスモードを遠景モードにする。
デジカメで顕微鏡写真をとる場合、接写モードを使いたくなりますが、その必要はありません。ただ、デジカ
メのフォーカスモードがオートになっていますと、顕微鏡の微動装置を動かすたびに、カメラがピントを前後
に動かし焦点を決めにいくので、
不安定で少しわずらわしく、時間のロスもあります。(イメージ写真9)オートフォーカスモードをはずし、マニュアルや遠景モードにしておくと、必要以上のピン
トのふらつきを防ぐ事が出来ます。
(4)フラッシュを発光禁止にする。
デジカメをオートモードで使用していますと、暗くなると自動的にフラッシュが発光します。 顕微鏡写真で
は、視野が暗い時や(沈渣の検鏡時や暗視野や蛍光使用時、等)、対物100倍で撮影する時は、カメラに入る
光量が少なく、自動的にフラッシュ
が発光する時があります。そうしますと、カメラの露出はストロボ発光
にあわせて絞られているのにストロボの光がカメラに入らないので、写真が暗くなってしまいます。(写真10) これを防ぐために、フラッシュ発光禁止モードに設定しておくことが大切です。顕微鏡の電圧を上げたり、NDフィルターを外して光量を増加させることで、フラッシュ発光モードにならないようにする
ことも可能です。
(5)重なりのある細胞集団を撮影するときは露出をややオーバー目にする。
細胞集団は中心部にいくに従って明るさが少なく、平均測光で撮影すると中心部は光量不足で暗く写ってしま
います。 スポット測光や中央部重点測光を用いるか、露出を少しオーバー(露出補正を+0.7か+1.0)にすれば解消できます。(写真11)